道路関係四公団の民営化後は、自由に経営を行えるサービスエリア・パーキングエリアで大規模な改築工事が実施されるようになり、常に出入りが激しい過密な交通量を誇る路線では購買意欲を高めるようなフロアに切り替わった所も多い。
とはいえ、民営化した後に休憩施設の魔改造が施された場所は限定的で、意外と多くの場所で公団時代に建てられた旧式の施設がそのまま残されている。
JH時代の建物はNEXCOグループの時以上にSA・PAの経営が制限されていたことや、前身の財団法人道路施設協会がほぼ独占的に中立性を重視したサービスを提供していたため、フロア内も似たり寄ったりのワンパターンな構造をしている。
立地場所によってフロアの構造が異なったりするものの、基本的には上図のようなレイアウトをしている。共通していることは、出口ランプ沿いにトイレがあり、その隣にある購買施設の玄関口を経て、自動販売機コーナーに通じている所である。
ドライバーがトイレ休憩をする際、要を済ませた後でまず欲しいと思うモノは、ドリンク類だろう。そうと考えれば、トイレのスグ隣に自動販売機コーナーを大量に設置し、少し前ならニチレイの冷凍食品やカップめん自販機などを持たせておけば、軽食の代替として融通が利く。
自動販売機の隣にはインフォメーションコーナー(ハイウェイコンシェルジュ)があるが、これは道案内をするガイド役のような存在で、SA・PAが立地している所から概ね50km圏内の観光地案内や、この先の高速道路に関する料金・所用時間を伝達する目的から設置されている。ココに来て助かった~という人も多かったはず。
「出口ランプ沿いにトイレ」というケースが大変多いが、これは駐車場の配置関係による。もしも入口通路沿いに設けてしまうと、入口通路沿いにクルマが集中し、交通の妨げを引き起こすからだ。そのため、ワザと出口通路沿いにトイレを確保し、そこに小型車を優先的に駐車させることで、後続車や大型車の進入・一時休憩を行いやすくする狙いがある。
これらを勘案すると、当時の協会・JHが考えていたこととしては、トイレ・自販機・情報案内の3つを抑えておきたかったという思惑が透けて見える。
一方で、おみやげコーナーや食堂・レストランに関しては、道路サービスの提供という側面でみれば、JH時代はさほど考慮されておらず、ご当地メニューなども必要最小限に留めていた模様。一部の施設では、委託したテナント会社のコンプライアンスが全く機能していなかったという話もあるため、この辺が道路関係公団民営化の槍玉に挙がったのではないかとみている。
このように見てみると、JH時代は良くも悪くも、高速道路を使って目的地へ向かう際の休憩ポイントという程度にしか見られておらず、そこでの購買機能も今よりも大幅に合理主義的に作られていたことが窺える。民営化後は「トイレ・駐車場・非常電話以外は会社の持ち物」と解釈が変更されたため、それまでの合理主義的な考えから、多様性を重視したパワフルなデザインに切り替えられていったことが分かる。
私はJH時代の建物の方がなにげに好きだったりする。一番の理由は「迷わなくて済む」という所が大きい。ただ、大規模リニューアルで何もかも変わってしまった休憩施設も、指数本程度ならお気に入りとして登録している物件もあるし、JH時代の建物であっても、バリアフリーなど超度外視した北熊本SAなんかは論外。やはり、その時の気分や旅の風情・その地に何があるのか・ドライバーへのサポート体制がどのようなモノかで大きく左右される。