そらマメさん道路局

以前のブログから、道路関係と一部の公共交通の話を分離させたもの。鉄道関係・新聞流通の話は、別ブログで。

県境封鎖が難しい理由

www.sanyonews.jpwww.sankei.com 岡山県知事のカゲキな発言が注目を浴びているが、そもそもの話、「県境封鎖は可能なのか?」を冷静に考えてみた。その結果、どう考えても100%の封鎖は不可能だと思う

理由1 物流をストップすれば、かえって経済が疲弊する

参考:日本のトラック輸送産業―現状と課題全日本トラック協会・2018年版)

f:id:fuwafuwaame:20200425062920p:plain

全体の9割が貨物輸送で占めているのに、擬似的に閉鎖となりゃどうなるんだか……。(全日本トラック協会HPより引用)

 高速道路のSA・PA一般国道の県境付近で強制的に検問を行うのが各都府県知事の見解だが、強制力が無いにしても、そこでUターンさせるような真似をすれば、事実上、流通機能が停止してしまう。なぜなら、道路を行き来するトラック輸送が9割を占めており、それ以外の空路・海路・鉄路など米粒以下の輸送量しかない。流通がストップすることは、重要な物資を運ぶことも不可能になるため、いずれもで県境閉鎖もどきを行えば、ほぼ一発で経済が大混乱に陥る。

理由2 「経済圏」で考えているのか?

 産経の報道にあった岡山県知事の見解は、あくまでも岡山県を素通りする瀬戸内海沿いの主要幹線を封鎖するという考えだが、一口に岡山県と言えども、瀬戸内海沿いで考えれば、隣の広島県備後地方(福山市尾道市しまなみ海道沿い)や兵庫県播磨地方(赤穂市たつの市など)、更には海を隔てて反対側の香川県高松市坂出市など)も通勤・通学圏内に入る。そこまでひっくるめて考えると、例えば住まいは福山市でも、実際に仕事に出かけるのは倉敷の工場という事例も有り得るため、そこを封鎖すれば済し崩し的に広域経済圏が疲弊し、失業者が多発するリスクが生まれてしまう。

理由3 「県境」は、必ずしも道路とは限らない

 県境と聞くと道路のイメージがある。なぜなら、道路は誰もがオープンに利用できるパブリックな行政サービスであり、県境に行けば標識や記念モニュメント・峠の茶屋などもあって、比較的分かりやすい。一方で、意外と見落としがちなのが鉄道だろう

 たとえば鹿児島本線の場合、福岡県区間は起点の門司港駅から大牟田駅までだが、途中で佐賀県区間を跨ぐ原田駅~JR久留米駅。この間、検問を行おうとしても、佐賀県に入って最初の駅となるけやき台駅 or 肥前旭駅は2面2線の相対式ホームとなっており、いわゆる信号待ちを行うスペースが無い。となると、県境に近い原田駅かJR久留米駅で検問を行うことになるが、検問をしている最中は鉄道が停車するため、検問に合格したら反対側で待ち合わせしている列車に乗り換えみたいな、非常に面倒臭いステップを踏む必要が出てくる。ましてや、通勤・通学時間帯に人力で行う場合は、自粛いえども客足が多く、ダイヤが大幅に乱れまくって混乱するリスクが高まるだけだろう。

 また、県境は道路・鉄道だけではない。地図で描かれた所が県境なわけだから、そこが小規模の河川だったり、獣道だったり、あるいは未整備でもどうにか徒歩や登山バイクで乗り越えられると判断すれば、意地でも県境を飛び越えようと考える。

理由4 「飛び地」に対する配慮を考えているか?

dailyportalz.jpwww.nishinippon.co.jp

 県境封鎖をする上で更に見逃せないのが、いわゆる「飛び地」となっている地域への配慮だ。九州で例えるなら、「福岡県大牟田市の中に、熊本県荒尾市(その逆もアリ)」。この飛び地に住んでいる世帯の場合、県境を封鎖すれば孤立化(≒居住移転の自由に反する)という、一歩間違えると行政上のトラブルが連発する事態が生じること(元々、大牟田の中に荒尾があると言うのは、江戸時代に三池藩が農業用水を肥後藩から融通させる代わりに、その一部を差し出した領地の名残)

 他にも、福岡県と佐賀県筑後川北岸区間久留米市大川市)には、大野島・大詫間も含めて複雑に県境が蛇行している地域があるが、元々、そこが筑後川だったことの名残で、線形改良で今の筑後川が誕生した時に、改良前の国境に沿ったものがそのまま県境に繋がっている。そこを閉鎖しようと思えば、少なくとも県道19号は全面通行止めとするか、事ある度に県境の前で検問をしないといけない(最短100mの場所もあるんですよ!)。しかも、買物に行くに佐賀県と福岡県を行き来する世帯も存在するため、やはり面倒なだけで、非常に効率が悪い。

その5 ナンバープレート=出身地ではない。

www.mlit.go.jpwww.airia.or.jp

 よくある誤解の一つで、ここ最近問題視されているもの。例えば福岡県内にある4つのナンバープレート(福岡・北九州・筑豊・久留米)に対し、全く見知らぬ他県ナンバーの車があった場合、その他県ナンバーはヨソ者という話である。

 確かにヨソ者であることは多いが、ナンバープレート(自動車登録番号標)は自動車所有者が最初に登録した運輸支局、もしくは自動車検査登録事務所がどこだったのかに過ぎない。福岡県内で「旭川」ナンバーがあったとしても、それは最初に自動車を登録した地域が北海道だっただけの話に過ぎず、単なる他県民に対する排外主義にしかならない。

 また、レンタカーの場合も、別のレンタカー店舗へ回送する目的で移動することもあるため、ナンプレだけで他県民と判断するのは非常に危険である

まとめ。

 新型コロナウイルスがGW中に他県に飛散して大変だぁ!」という、都府県知事の焦りや気持ちは分かる。しかしながら、県境と言えども、実際には経済的にも文化的にも深い結びつきがあり、単純に県境閉鎖をすれば万事解決……は、決してならない。寧ろ、本来の経済圏を破壊するだけで、ウイルスによる死亡者数よりも、地政学的な問題で紛争に突入する危険性の方が大きい。また、広域輸送を行う貨物車に対しても遠慮無く封鎖を行えば、たかだか一県だけの問題のはずが、全国区にまで打撃を与えかねず、ますます混乱に拍車が掛かるのは避けられない。

 別に「検問」言えども、あくまでも体温検査をする程度の話だが、話がエスカレートして本気で県境閉鎖を実施し、行政や政府が暴走してしまっては元も子もない。

 なので、GW中は外出を控えるか、どうしても出かけるなら自分が住んでる県内で三密になりにくい場所に留め、運悪く三密だった場所は潔く撤収する、ということを心掛けることが現実的な話では無いだろうか

 ちなみに。

www.nikkei.com

 道の駅の閉鎖も、また極端な判断やなぁと思う。道の駅の基本理念である「トイレ休憩・情報発信」を無視して強引に閉鎖でもすりゃ、何のための道の駅なんだって話。不要不急じゃなく、正当な理由で道路を利用し、用を足したいだけなのに「閉鎖で使えません?それなら道の駅など作るな」みたいな極論が出てきてもおかしくない。せいぜい購買施設のみ、臨時休業するだけでOK。(客観)