2020年台風10号は、急速に発達をしながら北上を続けており、沖縄本島・奄美大島の地点で中心気圧が915hPa・最大風速が50m以上・最大瞬間風速80mを超える「ケタ外れ」「規格外」の台風になる見通し。その後も勢力を殆ど衰えることなく北上を続け、7日月曜日には九州島に最接近・上陸する予想になっている。
2018年に大阪に台風21号が上陸してエラいこっちゃになっている動画があり、その間にタンカーが関空橋に激突して復旧までに相当の時間を要したことは記憶に新しいが、それをさらに上回る規模の台風とあるだけに、筑後人の自分にしたら今の段階で凍り付いている。「こんな時でも新聞配達しないとイケないのかよ」と(←それかい)。
↑の話は記憶に新しい。(大阪産経より)
で、みんな台風の規模ばかりに注目が行っているが、台風の被害に関して予め物申しておくと、九州島と本州を結ぶ関門橋がもしも風に煽られて破損した場合のことを想定している人は、NEXCO西日本や国土交通省などを除いて、あまりいないと思う。
理論上は風速80mでも耐えられるが……?
理論上は最大瞬間風速80メートル、最大風速毎時50メートルの状況下でも耐えられるように設計されているが、実際に建設した後で実験した訳ではない。あくまでも関門橋に見立てたミニチュアに風速80mの風を当ててみて、この設計なら耐えられるという当時の研究結果をもとに作られている。従って、「耐えられるようには作られているが、リアルで試したことがないので、ホント台風こっちに来るな!」というのが技術者たちの本望だろう。
↓最大瞬間風速80mという風を実験した動画
風速80メートルの暴風再現【いばキラニュース】R1.7.11
九州島が絶滅するほどの被害になる恐れ
では、もしも橋がケタ外れの暴風によってプッツンと切れた場合。どのような被害が想定されるか。
1.長期的に物流機能がストップしてしまう
橋がプッツンと切れることで、当然のことながら陸路での通行が不可能になる。本州と九州を陸路で結ぶ場所は現段階ではココだけしかないため、九州島と本州が文字通りの「孤島」になってしまう。
それを言うと「陸路がダメなら、フェリーや飛行機で運べば良い、何なら新幹線や在来線貨物で運べば良い」みたいに思う人もいるかもしれないが、↓の話でも述べた通りに、それらを全部足しても物流量で見れば全体の10%にも満たない。
そうなると関門橋自体を復活させるのに、最低5年は掛かる。その間、九州島と本州は完全に孤島の状態なのでフェリーで自動車を運ぶしかないが、人手不足の問題やフェリーの輸送自体、昭和の時とは次元が違いすぎることから対処出来ない状態が延々と続くことになる。
2.高潮で関門トンネルが海水に浸かり、行き来が困難になる
「なら、橋がプッツンと切れたらトンネルで迂回すればいい!」と思っている人もいるだろう。しかし、ケタ外れの台風を侮ってはいけない。
関門トンネルがある場所は、車道の出入口は海から遠く離れているが、人道は関門海峡のスグ隣。極端な低気圧が海上を通過するため、そこで海水が巻き上げられて関門トンネル人道口の方に流れ込むことが想定される。人道トンネルと車道は同じ場所を通るため、排水が追い付かずにあっという間に人道・車道が水に浸かり、場合によっては機械装置が破損して復旧までに時間が掛かることも考えられる。
仮に復旧できたとしても、関門トンネルは片側1車線しかない、非常に狭い道路。そこだけに絞られると、国道2号・3号は身動きが全く取れない大渋滞が24時間続くことになり、関門トンネル料金所に近づくだけで5時間待ち、トンネルに入れても身動きが全く取れないので2~3時間缶詰とか、ごく普通の状態になる。
下関・北九州都市圏の経済は一気に衰退し、済し崩し的に本州・九州も間接的に経済損失がケタ外れなモノにまで大きくなることが想定される。
一応、JRや新幹線で行き来するという案も考えられるが、山口県・福岡県共に自動車に依存した土地柄であるため、代替輸送をJRで実現した所でたかがしれる。もちろん、新幹線・在来線どちらも時間帯問わずに缶詰状態となり、無理してダイヤ増発でも行えば今度は新幹線との連動も難しくなって、遅延や運休が頻発する副作用も考えられる。
3.医療・災害復旧車両が到着しない&メチャクチャ遅れる
2020年の九州豪雨では災害対策基本法に基づいて、多くの救急・消防・警察・自衛隊・国土交通省の専門部隊などが駆けつけてくれたが、航空自衛隊などを除けば陸路で現地入りしている。ということは、橋がプッツン切れた状態では航空機能を持つ緊急車両しか駆けつけられないため、そうした緊急車両の到着が遅れるか、もしくは現地入りすら不可能な事態が生じる恐れもある。
4.食糧調達どころか、最低限の食糧すら届かない可能性も
非常時に備えた食糧・水分などは自治体ごとに確保され、ご家庭でも貯蓄をしている所も多いだろう。しかし、ソレは関門橋をはじめとしたインフラが多少のダメージを食らった程度で、スグに回復できることを前提としている。
橋プッツンの場合は、そうした物資輸送自体が不可能になるか限定的になるため、備蓄もあっという間に無くなってしまうことが予想される。配給程度で我慢せい!って次元であれば、海路・空路・鉄道輸送程度で何とかなるかもしれないが、満足行く食事が出来なくなることは考えた方がいいだろう。
5.本州・九州への電力供給が出来なくなる
関門橋は単に橋があるだけでなく、電力を反対の島に送電させる機能も持っている(だいぶ送電量を減らしてはいるみたいだけど)。現在は電源開発会社による送電が主体となっているが、関門海峡の真下にケーブルを通して送電する話は、実はあんまり進んでいなかったりする。
www.nikkei.commainichi.jp ということは、橋プッツンが起きれば送電機能も停止することになり、中国電力・九州電力・電源開発などの発電会社による原発フル稼働の可能性も出てくる。これ自体はそんなに驚くことではないが、海を隔てて互いに電気を供給させてきた経緯もあるため、状況によっては関門都市圏を中心に電気の復旧が大きく遅れてしまう可能性もある。(素並感)
まとめると、
- まず、台風最接近・上陸に伴う、規格外の甚大な被害が確実に起こる。
- もしも橋プッツンが起きれば、その地点で本州・九州は「孤島」に。
- 関門橋が使えないので交通モードがメチャクチャに。
- 済し崩しでJR・新幹線も大パニックになり、本州⇔九州の行き来が絶望的に。
- 陸路が使えないので、緊急車両や災害復旧車両が到着できないか、大幅に遅れる。
- 送電機能がストップするため、一時的な電力不足の恐れ。
- 沖縄・奄美・九州島の経済はメチャクチャになり、場所によっては治安が著しく悪くなる恐れも(その間に死者・行方不明者の数が大幅に増える)。
- 避難所生活が秋~冬まで続けば、COVID19大流行の危機に対応できなくなる可能性。
たかが橋、されど橋。
↑の予想は、あくまでも最悪な事態が生じた場合のシミュレーションであり、かつ、素人が適当に予想した陰謀説の範囲でしかない。ココはNEXCO西日本や国土交通省の見解を信じるしかないが、ケタ外れの台風が最接近することが確約された以上、万一の事態を想定すると青ざめてしまう。当然だが、もしそうなったら「GoToフリーパス発動で、今年最後の瀬戸内海ドライブが出来なくなる」なんて言ってる場合ではない。
現段階では関門橋と国道トンネル・鉄道トンネルで賄っているものの、橋は1本のみ、国道は脆弱すぎ、鉄道はダイヤが乱れやすいといった難点を抱えているため、橋プッツンだけでも甚大が影響を及ぼしてしまう。
そのためにも、下関北九州道路という別線の整備が求められてきたのではないだろうか。前首相の忖度でそうなったのではなく、ずっと前から関門海峡でのリスクを想定した先人たちの知恵と懸念を解消することが真の目的である。
たかが橋。されど橋。基本的に迂回できない場所に対し、普段から利用している道路を見つめると、改めてインフラ整備とは何なのかを考えさせられる。
てかそれ以前の話、台風来るな(マジで)