そらマメさん道路局

以前のブログから、道路関係と一部の公共交通の話を分離させたもの。鉄道関係・新聞流通の話は、別ブログで。

国道266号に残る「ミニ酷道」

 熊本県天草市牛深と熊本市中央区を結ぶ、天草下島・上島の国道266号は、段階的に改良工事が行われ、現在は殆どの場所で快速移動が可能になっている。未改良区間天草市倉岳町棚底~上天草市龍ヶ岳町大道の部分に留まっており、この部分は国道指定が行われて半世紀近くが経過した現在でも、ヒッソリと酷道が残されている。

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倉岳町尾串地区の様子。一応、ココも1日1本だけ九州産交バスが通るらしい。

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リアス式海岸に沿って、険しい狭隘道路が続く。

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バイパス道路の建設が進行中であり、そう遠くない未来に「酷道」は解消される。

 狭隘道路でリアス状になっている上島地域をなぞるように通過していることから、僻地にありがちな酷道そのものである。ただ、多くの場所で改良工事(現道拡幅・バイパス新設)が進んでおり、この区間酷道解消に王手が掛かっている(具体的な完成日時などは不明)。

 前述の通り、酷道以外の区間では改良工事が完了しており、八代海沿いの島々を眺めつつ、快速化された海岸道路を楽しめるドライブコースになっている。

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海岸沿いをスイスイ

国道266号は、昔から倉岳・姫戸経由ではなかった

 国道266号の地図を見たり、実際に上島・下島を走ると分かるが、2つの島のメインルートは国道324号(島原湾沿い)を通っており、逆に番号が若い(≒国道指定が古い)はずの国道266号は、なぜか人口が少ない倉岳・姫戸地区を通るルートになっている。

 1963年に国道266号が誕生した当時は、純粋に下島・上島を縦断するルートになっており、1966年の天草五橋の開通を見越して、牛深~本渡~松島・大矢野を経由するように定められた。

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1963年に認定された当初の国道266号天草上島のルートが異なる。

 その後、天草上島に狭隘区間が残る倉岳・姫戸方面を改良することや、1970年に追加された国道324号との重複を回避することなどを理由に、現在の八代海沿いを通るルートに変更。当時存在していた主要地方道を国道に鞍替えしている。

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改良工事を行うことなどを理由に、倉岳・姫戸経由に進路を変更。

 1993年の「平成国道」の際には、当時の終点だった旧・三角町の天門橋入口交差点を通過点とし、熊本市中央区)にまで延長。八代海沿いを通りつつ、松橋から熊本までは嘉島町を経由・迂回する形で延伸。これにより、見た目の上では熊本都心と天草諸島を結ぶ国道となったものの、本来の天草上島・下島縦断型の路線だけでは無くなったため、どことなく「後発組」のような印象になっている。

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くまモン先生)ばっ!がーば長くなったばい。

 シンプルに天草上島・下島を結ぶ国道だったはずが、いつの間にか解釈が変わって熊本都心~天草を行き来する国道に変貌してしまったのか。やはり転機は「天草五橋開通」にある

 天草五橋が開通するまでの天草は完全な離島であり、船舶を使うしか手段が無かった。島民の不満は高まる一方で、何としてでも九州本土まで陸続きで繋がって欲しいという願いを叶えるため、請願を続けた結果、当時の日本道路公団が整備代行する形で天草五橋が完成した。合計5つの橋をさほど景観を崩すことなく通過出来るようになったことから、島民の熊本都心部への行き来だけに限らず、逆に九州本島から天草へ行きやすくなり、観光・物流・産業拠点の強化が発展していった。

 結果、天草の経済発展は進む一方で島原湾沿いに偏るようになり、万一、その部分が通行不能に達した時に、確実に迂回できる道路の整備も必要と勘案したのではないかとみている。そのためには、島原湾沿いを通るルートとは別に、八代海沿いを通る主要道の強化が必要と判断し、国道266号の位置を有明海沿いに変更したためと考える。

 国道に鞍替えすれば、国土交通省(旧・建設省)が建設に掛かる費用の1/2を負担してくれる。となれば、当時の熊本県としても、既に改良が進んだ島原湾沿いのコースは部分改良や修復工事の方に重点を置きつつ、迂回路や道路整備が不完全な八代海沿いの方にリソースを割り当てることで、段階的に「酷道」を解消していくことが出来ると目論んだと考えられる

本来、酷道は楽しむモノじゃない。解消しないといけないもの

 ↑のタイトルを言うと「何だかなー」という結果になるものの、本来、「酷道」というレッテルを貼られた地区というのは、悪条件のもとでも暮らしていかなければならない住民に対する、行政サービスの向上が根底にある。国道らしくないムッチャ狭い道・悪条件過ぎる道路に対して「スゲー!」と叫ぶのは簡単でも、現実的にその地で快速化を図ってまで工事を行うべきかは、地域によって左右される。

 今回の場合は、八代海沿いの住人にすれば改良化を進め、熊本・本渡方面へのアクセスを改善することで生活向上を図れる確実性があることと、島原湾沿いに偏っている道路交通を分散化・緊急時の迂回路確保を行う必要性があることから、このルートが策定されたのは納得出来る。

 「酷道」の汚名を返上するためには、ただ楽しむだけでなく、酷道呼ばわりされる地域の諸問題を少し勘案しながら接していく必要があるんじゃないかなー、なんて思いながら家路についた。

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コレが見れただけでも満足。

 実際の経緯など、具体的に調べられる機会があれば、熊本県立図書館などで資料を探った方が良いかもしれない(て言いつつ、実際にはなかなか行かんのよね)。

酷道大百科 (ブルーガイド・グラフィック)