島根県には出雲市にある出雲空港と、益田市にある萩・石見空港、それに離島の隠岐の島にある隠岐空港と、合計3つの空港を抱えている。そのうちの一つ、萩・石見空港に来てみた。
島根県は真横に大変長い土地柄である一方で、産業・商業面では東側の出雲地方に偏っており、出雲空港が事実上の島根県を代表する空港として機能しているのが実情である。このため、交通網で大きなハンディキャップを受ける西側の石見地方にも空港を誘致するべきという声が高まり、1987年に建設が始まり、1993年に開港した。
元々人口が少ない石見地方と山口県北部向けの空港であるため、運行本数は極端に少なく、自治体が通勤・旅行客に対して補助を出すなどの迷走が続いている曰く付き。開業当初は大阪との往復や国際線も存在したらしいが、現在は東京・羽田空港へ向かう空路が往復2本運行するのみに留まる。萩・石見空港を担当する航空会社は全日本航空(ANA)の1社のみ。
萩・石見空港は3階建て。1F部分に手荷物預かりコーナーと搭乗手続きカウンター・レンタカーがあり、2F部分に検査所と搭乗待合室・売店・レストラン、3Fに展望台が設けられている。出雲空港のソレに比べれば小規模であり、この地域に見合った造りをしているなと思った。
新型コロナウイルス感染症(COVID19)の影響で空輸がストップしている状態が続いており、ココも例外なく全便欠航となっていた。島根県の特産品を扱う売店もクローズドになる一方で、レストランは普通に営業していた。飛行機が飛ばないため、利用客は空港関係者か、隣接する万葉公園からの流れじゃないかと見てる。
3Fの展望台、飛行機が1台すら着陸していないため、シーンとした空気が流れる。運行本数が1日2往復という条件に加え、COVID19も重なって余計に。一方で滑走路は空港らしく結構な距離があり、万一の事態には代替拠点としての活用も出来るのではとも見て取れた。
代替空港としての活用にも一定の期待があるかもしれないが、それ以前に山陰本線の電化・複線化で出雲・松江方面へのアクセスを強化する方が県民の利便性向上に役立ったのではないかとも思う。
ただ、ソレは「それなり近ければ」の話であり、益田市~松江市までは直線距離で約100km近くも離れているため、JRの高速化+出雲空港乗り継ぎ対策では時短効果は微妙な所だろう。「無いよりマシ」だが、かといってあったらあったで誰も使わないという二重苦も。難しいにゃん……
JRの高速化どころか、山陰本線自体が減便になる一方で、それに置き換わるE9山陰道の建設に関しては、2020年代前半までには松江・出雲~浜田・益田の一本化を目指す方向になっている。空路としての活用強化に結び付くか見所だろう。