タイトルの通りである。
日本道路公団の分割・民営化議論の際、有料道路として整備した後で料金収入を回収することが難しい地域に関しては、国と地方で分担して高速道路を整備する新直轄方式が採用され、末端部の路線を中心に高速道路が延伸・開通していった。
確かに無料自専道として運用されている地方路線に関しては、民営化議論の過程で生まれた「料金収入と今後の償還期間を天秤にかけた結果、有料道路方式では採算性は見込めない」という論理に見合った交通量であるのは確かなようである。
しかしながら、新直轄(または直轄)の最大の懸念は、料金収入のどうのこうのではなく、本来、道路特定財源として徴収した税金である以上、自動車にのみ優遇させてよいものか?という考えが根にある。
有料道路として運用する場合は、あくまでも有料に指定された部分に対し、道路管理者(と通行料を許諾した自治体・政府)の裁量のもと、それで得られた料金収入のもとで維持管理を行うため、「使った人間が、実質的な道路使用料を支払う」という意味では非常に公平性の高い制度といえる。日本道路公団時代も、確かに汚職問題や不透明な入札等の問題はあったが、あくまでもそれはJHとの道路整備等に対する契約の面で不正があったというだけで、有料道路を使う利用者から対等に通行料を負担して貰うことに関しては、何一つ不正・倫理観の崩壊とはなかった(ある意味、トバッチリを受けた被害者ともいえる)。
また、新直轄等による無料自専道として整備した結果、下記の問題も懸念されるようになった。
- 渋滞の発生
拡幅に必要な税収を確保できず、交通量の増大時でも対処が難しい。
- 旅行速度の大幅な低下
「誰もが使う」ため、本当に時間短縮目的で使う利用者の立場に沿った道路整備・維持管理が出来ているとは言い難く、計画交通量を上回る車が乱入して速度低下に拍車を掛ける。いわゆる「冷やかし」客への対応。
- 災害時の復旧に手間取る
- 全て税金で整備する以上、どうしても社会保障費の方に税金配分を割り当てる必要があり、インフラ整備は重要性があるにしても、そこまで予算が回らない。
- 設計技術者・維持管理者の人員不足
インフラ整備の技術者が世代交代と共に人員不足となり、少ない予算のもとでその地域を守る役目すら危うくなっている。
- 道路管理者が余計に複雑になり、利用者は混乱。
道路整備主体が国・地方と有料道路事業者とで分かれた結果、有料と無料が混在しているために公平感に欠け、沿線も含めて利用者が混乱。
新直轄等をはじめとした無料自専道の整備は、当時の日本道路公団の民営化議論の際、「無駄な道路整備」という何となく感情論のもとで見直し議論が進んだ側面が大きい。背景は、地方と都心の道路整備に対する意識の乖離が主たる理由で、都心部では十分に道路整備・維持管理が行き渡っているのに対し、地方部では未整備箇所が数多くあり、生活に支障を来しているという問題を、国民が共有し合わずに敵対したことが根にあるから。
「採算が合うか合わないか、コストパフォーマンスとして割に合うのか」といった議論で検証した結果、整備はするが拡幅など度外視な完成2車線の概念も生まれてしまい、世界の漂流である時速100キロ以上の旅行速度を持った高速道路の整備さえ、否定される始末である(場所によっては地形的な事情からやむなくそうしている所もあることに留意)。
利用者から対等な便益を回収し、ドライバーとしても時短効果の大きい高速道路を使用する以上、しっかりと通行料、もしくはそれに相当する税金を直接的に納付し、快適な道路空間を実現するためにも、今の新直轄方式・無料自専道方式は見直すべきだ。最低限、新直轄は撤回するべきだし、それが難しいにしても、拡幅・休憩施設・災害対策の予算確保等を自治体が求める以上、それに応じた有料道路制度の確立は絶対に必要である。