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既に東峰村 側は数日前の地点でBRTに転換するという意思表示を示しており、昨日の村議会で正式にバス専用道を受け入れる方針を決めたため、後はJR九州 との協議でBRTの運用を巡る議論へと進んで行く。ココに到達するのに3年。なんでそんなに鉄道にこだわるんだか……と客観的に見ていた私にしたら、JR線という一つの在来線を残してくれただけでも奇跡である。
で、その話はもう終わったので、ココでは実際にBRTで運用を開始した時の課題を考えてみる。
たぶん、これは導入しない「SUGOCA 」
交通系ICカード での乗車 。BRT気仙沼 ・大船渡線 の場合は、原則としてバス車内のみ使える「odeca」 を導入し、通勤・通学客のアシストを行っている。odecaと他の交通系ICカード (Suica など)とは基本的に互換利用が出来ない 。つまり、ハナからBRT区間 でしか使えない交通系ICカード である。
一方、今回のBRT日田彦山線 では、JR九州 がSUGOCA を利用できるようにするとは考えにくい 。理由として、
BRT日田彦山線 は見かけ上は在来線だが、実際のところは「道路運送法 に基づく一般乗合旅客自動車運送事業」として運行されているため、JRの鉄道利用における「旅客営業規則」が適用されない (一般乗合旅客自動車運送事業取扱規則に基づく路線バス扱い)。そのため、今まで利用できていた「SUGOCA の連続利用特例(善導寺 ⇔夜明⇔城野を途中下車せずに利用)」が適用されなくなる可能性が高い 。
BRT区間 にもSUGOCA を導入となれば、元々利用客が皆無に近い地域に対し、多大な設備投資が必要になる上、現段階ではBRTと鉄道の境目となる添田駅 をはじめ、そこから北側の添田 ~城野+後藤寺線 にもICカード 読み取り装置を取り付けないといけなくなり、低コストで運行再開という建前論が崩れる。
バス輸送を外部委託(恐らく、夜明・添田 で繋がっている西鉄 グループになるものと見られる)する場合は、その委託に対するコストも発生するため、設備投資の面で割に合うとは考えにくい。
これらが挙げられる。もしかしたらポンチョを運行するバス会社が西鉄 系となり、それでいて日田バス ・西鉄バス筑豊 でも導入されているnimoca で乗車可能となるなら、BRT気仙沼 ・大船渡線 の考えに近い「nimoca でBRT日田彦山線 だけ利用可能」という可能性も、なくはない。が、どちらにしても添田 or 夜明・日田で乗り継ぎとなった時にJRきっぷを別途用意する必要があるとなれば、磁気券での乗車か直接運賃支払いのどちらかが主流になるのは必至となるため、BRT日田彦山線 ではSUGOCA (nimoca など)は利用不可+乗り継ぎ特例も適用されなくなると思った方が良いだろう 。
気になる運賃だが、元々、BRT日田彦山線 はJR九州 の自腹で行うという前提になっているため、特に消費税率や基本運賃の改定をしない限りは現行と同じになるだろう(BRT気仙沼 ・大船渡線 の時と同じ)。ただ、今回は福岡県の要望に応じる形で、筑前 岩屋~宝珠山 を専用道で整備することになっているため、この部分を利用者負担に転換となれば、単純に考えれば基本運賃の上昇は避けられない(2020年現在で添田 ~夜明が660円なので、転換分を反映となれば700~750円ぐらいになる?)。
他にも、BRT気仙沼 ・大船渡線 の時に見られた、鉄道区間 との乗り継ぎに対する特例や、BRTであっても定期券での利用が可能になるのか、青春18きっぷ ・満喫きっぷなどの乗り放題きっぷによる乗車も可能かという課題も考える必要がある。
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途中の大行司駅 は、ホームと駅舎がある場所が80段近くもあり、バリアフリー 対策なども全く施されていない。しかも東峰村 役場に近いのはこの大行司駅 であるため、役場へのアクセスは「あくまでも村民や東峰村 の意見を尊重」 という立場から、かなり度外視している。
元々、JR九州 は「大行司は高台にあるから利便性が悪く、BRT駅として使うには不適切」 という考えから、敢えて筑前 岩屋で一般道に戻る計画を立てていた。そのため、アノ石橋にバスが通るだけでもマシという考えで生まれた延伸策は慎重に考えないといけない。
麓へどうやって降りるのやら。バリアフリー 工事も割に合う投資とは言いにくい。
対策としては2つ。一つは「バス専用道を通る時間帯と、一般道を通る時間帯で分ける」というもの 。
通勤・通学時間帯は利用者の利便性を勘案し、筑前 岩屋⇔(一般道・東峰村 役場前)⇔宝珠山 を行き来するが、それ以外の時間帯はバス専用道で大行司に停車。これならば、JR九州 が提示した利便性向上と、東峰村 が尊重する専用道の有効活用どちらも意見がまとまる。一番これが現実的な落しどころではないかと見ている。
もう一つは「大行司駅 の駅ホームを大きく低くする」というもの 。現在の80段近くもある階段を出来るだけ低くし、その分、専用道区間 の坂道をやや急傾斜にする。既に専用道は鉄道ではないため、自動車の道路交通に支障が出ない範囲(最大傾斜5%を目安に検討)で改築し、大行司駅 のホーム部分のみ平らにしてポンチョに乗りやすくする。
専用道自体の改築が必要になるため、極めて多大な県税が必要になる上、バリアフリー 化にしても階段とは別の通路を作らねばならなくなる。人口減少社会の東峰村 で、それは実現出来るものなのかは微妙だし、もしもBRT自体が戦力外となった時は、JR九州 が懸念する鉄道の負の遺産 となるのは必至だ。
なお、個人的な考えとしては、別に大行司は相対式ホームである必要はないと見ている。鉄道時代であれば本数も多かったことから、信号待ちを行う観点から相対式で運用という形で対処していたのだろうが、BRTであれば、せいぜい釈迦岳トンネルでの待機程度に留まる。であれば、筑前岩屋駅 を相対式に作り替え、それとは別に添田町 側にも1箇所程度の待避スペースを確保できれば、それで十分ではないだろうか。
代行バス の臨時駅・小石原庁舎前駅はどうする?
あくまでも臨時。
今年のJRダイヤ改正 でコッソリと追加された改善点の一つで、新たに小石原村 庁舎(旧・小石原村 役場)前にも臨時駅が追加されている 。BRTで復活するにしても、専用道区間 の工事には数年程度の期間を要することから、当面はココにも代行バス が停車する。駅の近所には道の駅小石原もあり、小石原焼を含めた文化拠点が数多くある。
廃駅後は大行司駅 ・宝珠山駅 で一旦下車した後、西鉄バス に乗り換えてココに来るしかないが、元々、東峰村 は完全な自動車交通に依存した地域社会で、バス利用も殆ど使われていない。ユニバーサル・サービスの維持という側面で考えたとしても、BRTが完成した後は必然的に廃駅となり、再び西鉄 単独のバス停に戻るものとみている。
他
駅舎がある場所では自動販売 機を設けたり、JR九州 のことだから、市町村民の生活向上と称してファミリーマート (JR九州 系)やドラッグイレブン などの商業施設を誘致、なんてのも考えたが、殆どペイ出来ない地域にそれを導入しても数年で撤退というオチが目に見える。無くは無いが、今の地点ではそこまでJR九州 が面倒見切れる訳ではない程度の解釈である。
今の所はこんな感じ。