そらマメさん道路局

以前のブログから、道路関係と一部の公共交通の話を分離させたもの。鉄道関係・新聞流通の話は、別ブログで。

NEXCO15歳 

 2005年10月1日は旧道路関係四公団の分割・民営化が行われた日となっており、今年でNEXCO各社(旧・日本道路公団)・首都高速道路会社・阪神高速道路会社・JB本四高速は15歳になった

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今日で15歳。

民営化スキームを振り返る

 旧道路関係四公団の分割・民営化は、旧公団の負の側面であった「イタズラに高速道路を建設して不採算路線を増やすこと」が主たる理由である。他には談合事件が相次いだことも理由にあるが、それはワイドショー案件なのでココでは割愛。

 現在でもNEXCO各社のウェブサイトなどでも掲げられているが、高速道路会社の目的は下記を達成させることにあった。

  1. 旧道路関係4公団合計で、約40兆円にのぼる有利子債務を確実に返済すること。
  2. 必要な道路を、会社の自主性を尊重しつつ、早期に、できるだけ少ない国民負担のもとで建設すること。
  3. 民間企業のノウハウを発揮し、多様で弾力的な料金設定を実現し、お客さまに多様なサービスを提供すること。

 実際のところは名ばかりで、「1」に関しては財政投融資をあっさりと復活させて再び借金+税金で高速道路工事(主に4車線拡幅事業・高速道路リニューアル工事)を整備しているし、借金を減らすために国税を投入し、浮いた分でスマートIC増設やETC割引の一時的な補強を行っていたりする。

 「2」に関してはNEXCO各社に価格決定権や道路整備の裁量を与えることは許されていない。全て国土交通省沖縄県は政府)の判断で決まってしまうため、コレは形骸化というよりも、民営化するにあたっての表面的なことを言っておこうの次元だろう。「3」の価格決定も「2」に通じる所がある。

 一方でSA・PAに関しては、トイレ・駐車場・非常電話が国の保有物である以外は高速道路会社の持ち物に切り替わったこともあり、地域性に応じて柔軟なサービス展開が出来るようになった側面は大きい。また、国策でのETC割引を継続する一方で、いわゆる土日祝1,000円高速や無料化実験などの反省を踏まえ、地域限定での周遊割引を実施するなど、違う形での利用促進を沿線自治体と共に模索する機会も出てきた。

 それを踏まえると、確かに高速道路会社になったはいいが、実際のところは「民営化」というよりも「民間に委託している」が実情である。公共財の道路サービスは、同じように民営化の道を辿ったJRグループと違い、全ての国民が平等に利用できるパブリックな視点を持つ必要があるため、利用者を限定できるJRグループと同じ土台に立たせて市場競争を促すのは、いささか無理のある話だろう。

形骸化した "NEXCO憲法" をアップデートさせよう

 そこで、民営化スキーム改め、NEXCO憲法(便宜的説明)を現代社会にアップデートさせる案を提示したい。

第一条 債務返済と有料道路制度の堅持

(改正前)旧道路関係4公団合計で、約40兆円にのぼる有利子債務を確実に返済すること。

(改正後)旧道路関係4公団会計における有利子債務を返済しつつ、日本の全ての国土に行き渡る特殊な道路であることを勘案し、有料道路の恒久化を図る。

 NEXCO各社の本来の役割である債務返済は継続するものの、一方で、高速道路は通常の国道や県道とは違った、超広域移動を実現する特殊な道路であることを勘案する必要がある。

 そのため、原則として高速自動車国道と、一般国道自動車専用道路のうち、重要な幹線であることが確認され、料金収入と一般道路との交通バランスが均等になることが見込まれる路線においては、原則として事実上の永久有料化を実現するように条文を書き換える。安易に「他国は無料、日本は通行料が異常に高すぎる」といった批判は避け、恒久化することで国民理解を得られるように憲法を書き換えることが重要だ。

 なお、新直轄方式で開通した無料の自動車専用道路に関しては、4車線化事業の際に公的資金だけでは建設が困難と判断される場合や、渋滞緩和と並行する一般道路との交通管理の最適化を図ることを自治体が望む場合に限り、審議を経て有料化できる仕組みを憲法に刻む。

(参考文献)

高速無料化が日本を壊す

高速無料化が日本を壊す

  • 作者:上岡 直見
  • 発売日: 2010/02/01
  • メディア: 単行本
 
高速道路無料化 新しい日本のつくり方 (朝日文庫)
 

第二条 必要な道路の整備・維持管理

(改正前)必要な道路を、会社の自主性を尊重しつつ、早期に、できるだけ少ない国民負担のもとで建設すること。

(改正後)必要な道路の判断は、会社に加えて自治体の意思を最大限に尊重し、国土強靱に耐えられる道路の整備と、以前からある路線に対してきめ細かな維持管理を行うこと。

 2011年の東日本大震災や、2012年の笹子トンネル崩落事故、2016年の熊本地震などで高速道路が崩壊する事件が多発したことに加え、特にNEXCO西日本管内では梅雨末期の集中豪雨による被害が毎年のように多発している。

 また、災害時に緊急病院への搬送を行える体制の拡充化や、かゆいところに手が届くような場所(工業地帯・観光地・渋滞が酷い市街地・一般道路で次のインターまでのアクセスが困難な場所など)へのアクセス改善を図る目的から、スマートICを増産してきた経緯もある。

 こうしたことから、建前論として存在している「会社の自主性」は存続させるものの、本来、高速道路が通過している自治体の主張を出来るだけ優先させ、ハード面では高速道路やインターアクセス道路の新設工事を、ソフト面では情報提供の拡充化やETC2.0を活用した道路交通サービスの拡大化を実施するように書き換える。

第三条 高速道路料金

(改正前)民間企業のノウハウを発揮し、多様で弾力的な料金設定を実現し、お客さまに多様なサービスを提供すること。

(改正後)国民負担の在処に関しては、道路は公共財という視点から慎重に料金設定を行いつつ、利用者の利用実態に応じたサービスの提供を図るように随時見直しを図る体制を考慮すること。

 第1条で恒久的有料化の話を言及したが、恒久化をするにあたっては、地域情勢に応じて基本通行料を調整する仕組みを持つ必要がある。

 2014年度からの通行料見直しでは、「普通区間」「大都市近郊区間」「海峡部区間の3系統に分類され、普通区間の一部路線と海峡部区間においては、ETC利用時に出来るだけ高速自動車国道の基本料金に引き下げるように調整が行われた。

www.mlit.go.jp これを継承しつつ、4車線化が必要な地方部に関しては、既に4車線分の敷地を確保していることに加え、地方部の経済事情や利用促進を考慮するため、新たに「特定地方区間」を追加した上で、高速自動車国道の基本料よりも3~4割程度引き下げる。

 以上の基本設定を行いながら、ETC及びETC2.0の義務化を実現するにあたって、利用促進が達成されることが想定されることから、原則として直接的なETC割引は廃止、あるいは縮小する。具体的には、

  • 深夜割引:原則として中型車以上に限定し、かつ、ETCコーポレートカードを登録している物流・運輸業者に絞り込む。
  • 休日割引:割引率を縮小し、終日最大2~1割引に見直すか、後日、割引分に相当する金額を、登録しているETCカードに還元する形式に変更。

 なお、地域活性化の観点から、高速道路会社が実施しているETC周遊割引に関しては、自治体との協力や国土交通省との協議の末、引き続き継続することを許可する。

補足 キャッシュレス社会の実現

(新設)有料道路の利用にあたっては、新型ウイルス感染予防の観点や、新しい生活様式の確立を実現する観点から、ETCによる無線通行を義務化する。

 COVID19にケチつけられた事件が多発したことから、国土交通省内で急遽浮上したETC義務化の話。これをNEXCO憲法に刻むことで、ETC非搭載車に対してハッパかけることや、ETCカード所持が困難なユーザーに対する公助の仕組みを確立させる。

(参考)

www.mlit.go.jpsoramameroad.hatenablog.jp

総評

 いずれも当初の民営化スキームなど最初から建前であることが分かる。一方で、民間委託後に発生した様々な気象問題・交通量増大に対する適切な交通の最適化などを踏まえる上では、見直しの時期に差し掛かっているのは間違いない。

 最近になって、総務省・政府主導で通信料金の引き下げを指示する方針が下されたが、それに合わせて、移動型通信キャリアのNTTドコモが、持ち株会社のNTT本体と合併するニュースが飛び込んできた。表向きには市場競争の強化だが、政府案・総務省の見解としては「電話・通信は国の財産であり、国民の安心を優先する」というユニバーサルサービスを重要視する以上、市場競争の考え方から距離を置き、必要ならば公社方式に戻すことも視野に入れた判断とも見て取れる。

www.nikkei.comwww.itmedia.co.jp 同じ公社だった日本道路公団も、当時は「無駄な高速道路」と称して、道路行政に対するレッテル貼りブームが蔓延していた。民営化後は表面的なサービスは改善されたが、一方では無理したコスト削減や必要性の高い道路を「その時のノリ」で判断してきたことから、至る所で大小さまざまな問題が発生するようになった。

 これを踏まえると、いずれは現在のNEXCO3社体制も国土交通省・政府主体で見直しをする時期が必ず来るだろう。少なくともNEXCO3社は1社体制に切り替えて合併、必要ならば日本道路公団への原点回帰も、あながち非現実的とは言えないだろう。

 15歳のNEXCO誕生日に考えてみた。