山口県の国道は、元々が自動車交通に依存した地域性であることから、大半の場所で改良工事が完了している。そのうち、直轄国道として山口河川国道事務所が改良・バイパス新設工事を行っている物件ではなく、山口県が独自に整備している路線に目を充てると、今でもコンスタントに「酷道」が残されている路線がある。
前編は国道490号を。
小郡萩道路の建設を見越した暫定国道
国道490号は宇部市と萩市の間を結ぶ、陰陽連絡路線。途中で美祢市を通過し、萩市との境界に差し掛かった所で酷道区間がスタートする。
序盤こそそれなりに道幅が広いものの、笹目峠(萩市・美祢市境界)の手前から急激に道幅が狭くなり、萩市の木目地区まで離合困難な道路が延々と続く。そのため、山口県が主要道・萩秋芳線経由で迂回することを強く勧める標識が設置されており、酷道ファンのみならず、多くのドライバーでもネタにされるほどの曰く付き。
美祢市~萩市の酷道区間は、並行して自動車専用道路の小郡萩道路が建設されており、写真には無いものの、酷道区間の手前では開通へ向けた橋脚の設置が進行していた。つまり、元から存在する主要地方道を国道に昇格させた際、併せて地域高規格道路の指定を受けたことから、暫定的に「並行する国道」として設定したモノに過ぎない。小郡萩道路が絵堂IC~明木ICまで延伸(明木IC~E9山陰道・萩ICまでは萩道路の線形改良工事を実施)した際に、この区間は国道指定から解除される見通しである。降格後の路線は、既に萩秋芳線が別枠であることから、山口県から美祢市・萩市に管理権が譲渡されるものとみている。
カーナビの表記
「山口国体が開催されるから、カーナビを使うと国道490号の方が若干早く、酷道に入り込むから、カーナビ製造会社に申し入れを行った」説があるモノの、実際に私のカーナビで確認したところ、狭隘区間がスタートする寸前で国道490号表記が削除されていた(道路自体は続いている)。
一方、カーナビ代わりとして使えるGoogleマップは、ちゃんと国道490号の存在を示している。人力で情報を加筆修正していく自動車搭載型のカーナビと違い、GoogleマップはGPS+アプリ利用者の位置情報+利用者の道路利用に対する傾向・頻度をベースに1分単位で最短ルートを計算するため、「国道の存在を消せば迷わない」という山口県の思惑とは無関係に案内する。そのため、仮に酷道区間の利用者が一定数いれば、問答無用でこちらに誘導されると考えたがいい。実際には萩秋芳線経由の方に強制誘導するけど。
小郡萩道路の明木接続は、2025年度以降か?
2014年の事業化から7年近くが経過し、何となく自動車専用道路っぽい形になりつつある。明木ICまで繋がれば、後は現道活用となる国道262号+萩道路の組み合わせで、あっという間に萩市中心部に到達できる。体感時間としては、E2A中国道・美祢ICから向かっていた時と比較しても、約1時間近くも違うのでは?
今の酷道に引導を明け渡す日は、確実に近づいている。自専道(高規格道路)と引き換えに酷道が消滅するのは、どことなく諸行無常の響きがあるだろう。
後半に続きます。