ETC利用客限定で初めて導入された首都高速の距離別料金制度。2012年4月1日の地点では「上限900円・下限500円」といった、殆ど均一料金と変わらない仕組みだったが、徐々に上限・下限の範囲が拡大していき、2022年4月1日より「普通車MAX1,950円(営業キロ55.0km突破時)」に見直されている。
首都高速で距離別化が図られる理由は、基本的には渋滞対策と、首都高の周辺にあるNEXCO線(放射線・環状線)の有効活用である。首都高中央環状線が未整備だった2012年当時は、首都圏における迂回ルートが限定されていたこともあり、イキなり価格変動を行うのは無理があったが、その後は中央環状線・外環道・圏央道の整備がある程度進み、ETC利用時に「NEXCO⇔首都高⇔NEXCO」といった利用を行うことで、割高なNEXCO線を敬遠して首都高に流れ込み、結果として余計に渋滞する問題が想定されていた。
このため、首都高を連絡して首都圏以外のNEXCO線へ連続利用する場合、首都高速経由だろうがNEXCO経由だろうが、起点・終点どちらも通行料が変わらないように調整し、首都高一極化を回避することを目的としている。
www.mlit.go.jp 2016年4月1日から、当時の上限が900円→1,320円に引き上げられたが、高速道路の延長や環境の変化で混雑ポイントがずれ始めたことから、更なる柔軟性を持てるように1,950円に上限額を改定する。よって、一部メディアが騒ぐ「値上げ」は、全くのフェイクニュースである。
ちなみに、真の最大額は約3,000円相当になる見通しであり、完全なETC専用化が進んで、利用者からの理解が得られた所で導入する方針。イキなり約3,000円とするのではなく、900円→1,320円→1,950円→約3,000円と改定するのは、激変緩和措置の考えから来ている。
首都高速会社や国土交通省、さらには沿線自治体である東京都・神奈川県(横浜市・川崎市)・埼玉県(さいたま市)などは、NEXCO線との連動も踏まえ、丁寧に説明をし続けてきた。価格見直しで困惑する声もみられたが、ほぼ全員ご納得していただけたとみている。よって、首都高速会社や国土交通省などには、何の落ち度もない。不満あっての民主主義であることを理解する必要があろう。
ちなみに、4月1日から首都高速の大部分で「ETC専用化」がスタートした。現金等での通行は一切禁止であり、万が一入ってしまった場合には、係員による指示で退出しなければならない。2030年度を目安にNEXCO線も含め、全ての料金所がETC専用に切り替わる(それに合わせて、ETC非車載で通行した場合に対する道路交通法の改正も行われるだろう)。ETC車載器の設置は、お早めに。